銃・病原菌・鉄 下 ジャレド・ダイヤモンド著

読了メモだがあまりこころにのこったものはない。

 

・必要は発明の母ではなく、発明は必要の母であること。

 まず発明があって、そこからニーズが生まれたということ。

 

アマゾンレビューより

 

下記のような示唆に富む内容が伝わりにくくなってしまっている印象がしました。

「地形を含めた自然環境上の障壁が人間の発明の伝播にも大きな影響を与えている」
「技術は発明されてから用途が開発されることが多い」
「戦争によって社会が併合されるようになったのはここ1万3千年のことである」
「ヨーロッパ人はニューギニアの低地の病原菌にやられてしまったがニューギニア人はユーラシア大陸の病原菌にやられていない」
アメリカ合衆国は多様性において全く普通の国である」
南北アメリカ大陸の大型動物が更新世末期に絶滅していなければ全く違う道筋をたどっていたはずだ。家畜となり得る動物がユーラシア大陸のように残っていなかった」
「ヨーロッパの社会はずっと文明の利器を受け入れる側であった。」
「既存の技術を衰退させることが出来るのは統制されたシステムを持つ国。ただ一つの決定によって造船技術が跡形もなく消え去った」

現在の形に人類が至るまでの道のりを辿る旅も終盤多少疲れてきますが全くこれまでと違うアプローチからの人類史の旅は非常に面白かったです。

 

(上巻より続き)
 初期の文字は、納税の記録や国王の布告などを目的として使われた。人口の多さ、発明者の絶対的な人数の多さ、そして競合社会の増加は、さまざまな技術発展のスピードを促した。このような背景により、食料生産は人口の増加をもたらし、複雑な社会や集権化の形成を可能にしたのである。
 第4部では、それぞれの地域固有の謎に迫る。孤立性が高く他の大陸よりも人口が少なかったオーストラリア大陸、地理的要素により文化的および政治的な統一が比較的早い時期になされ、これがかえって災いした中国、食料生産スタートの遅れ、家畜化・栽培化できる野生動植物の少なさ、地理的要因や生態的要因により技術や作物などが迅速に拡散しなかった南北アメリカ大陸などを取り上げる。
 なぜ人類社会の歴史は、それぞれの大陸によってかくも異なる経路をたどって発展したのか。現在の格差社会をもたらした究極的な要因を考察した本書は、各大陸における環境的な差異、地理的な要因にその解を求め、生物学的差異を根拠とする論を繰り返し強く否定する。ヨーロッパ人が躍進した背景には、人種間の優劣ではなく、他の大陸と比較したユーラシア大陸の環境的、地理的なアドバンテージが存在したからなのである。
 繰り返しの説明も多々あるが、著者は自身の主張を裏付ける根拠を丁寧に解説してくれるため、本書の理解は比較的容易だ。興味深かったのが中国である。長期にわたる統一が、そうでないヨーロッパにリードを許した理由だとするが、良くも悪くも統一されていることで形勢を逆転させ、本書の刊行後20年を経て、中国は世界の覇権を争うにまで追い上げてきている。読んで損はない名著である。